やい東京。
今度、お前んとこにオレの先輩が転勤することになった。
ちゃんとうまいメシと酒を用意しておけよ。
もつ焼きも忘れんな。
あとキレイな夜景も忘れんな。
別に空気キレイじゃなくていいけど、ただ歩いているだけでウキウキワクワクしてくる感じは必要だぞ。
それから先輩は大阪から行く割にはあんまり口達者なほうじゃないから、ちゃんとたくさんおしゃべりしてくれる友達とかあとお姉さんとかと、すげー自然なタイミングで出会えるように、入念に準備しておいてくれ。
やい東京。
てめえ、あんまり調子に乗って、必要以上に通勤電車を混雑させたりしたら承知しないぞ。
あと先輩は英語とかあんまり得意じゃないんだから、観光に来てる外国人にやたらめったら話しかけさせるなよ。
だいたい先輩は日本語自体もあんまり得意じゃないんだから、とにかく知らないやつになるべく話しかけさせないようにしてくれ。
あと先輩はあんまり地理にも詳しいほうじゃないから、タクシーに乗りこんだ時には、ゆめゆめ運転手さんには「皇居は右回りで行きますか~?それとも左回りで行きますか~?」とか細かいルート選択を迫らせるなよ、だいたいどっちから行ったほういいのかくらい乗客にコミットとかしなくていいから、とにかく急いでくれたらいいんだってば。
やい東京。
一体お前んとこにどんな魅力があるのか知らないけど、あんまりオレの大事な仲間ばっかり連れていってくれるな。
この国がお前んとこだけで回ってると勘違いすんな、いやだいぶ回ってるのかもしれないけどさ。
いやオレだって知ってるさ、お前んとこがどれだけウキウキワクワクできるところなのかってことくらい。
だけど、その楽しそうな空気にどんどんみんな吸い寄せられちゃったら、オレはさみしいんだ、それを一体どうしてくれるってんだ。
だからオレはこれからも何度もお前んとこに行ってやる。
勘違いすんな、遊びじゃないからな、これは監査だ。
もつ焼きをほおばりながら、先輩がちゃんとそっちで楽しめているかをチェックしてやる。
やい東京。
調子に乗んな、このドリームシティめ。