フルタ製菓株式会社 ボツ案 

オンエア中のTVCMについてダラダラと書くにゃ

君は、もう戻れない。









チョコレートは、弾丸だ。


君の胸を一瞬にして撃ち抜く


甘くて凶暴な弾丸だ。





あらゆる理屈を飛び越えて


あっというまに脳髄を貫通する


優しく危険な弾丸だ。





もう勝負は、戦う前に決まっている。


駆け引きなんていう美しいものじゃない。


チョコレートを手に取った瞬間に


君の口の中は、びしょびしょだ。





レジに持っていくまで我慢なんてできない。


お上品に巻きつけられた包み紙を


グチャグチャに破り捨てて


なりふりかまわず、むしゃぶりつきたい。





なめらかな乳脂肪を舌でからめとり


むせかえるようなカカオの香りの中に


思いきり顔をうずめ、心ゆくまで楽しみたい。





その時、君は思いだすだろう。


僕らは人である前に、一匹の獣であったことを。


草原を走り回り、肉食獣の影に恐怖し、岩のすきまに隠れながら


果実を種までしゃぶりつくしていたあの頃を。





あの頃、僕たちは無力だった。


大自然という全能の神の前に、ただひれ伏すしかなかった。


恐れ、敬い、ただ祈るより他に術がなかった。





どうか、今日一日、生きていけるようにしてください。


どうか、怒りをしずめられて、非力な我々を罰さないでください。





人々の願いは、2万年の時を超えて、ようやく叶えられた。


神に慈悲があったのか、人類がその存在を打ち破ったからなのかはわからないが


君が茶色い砂糖菓子の、甘美な魅力に夢中になっている時


体内に埋め込まれた遺伝子たちの記憶は、喜びにうちふるえている。





食べたいものを、食べたい時に、食べたいだけ、食べられる。





そんな切ない望みが受け入れられる瞬間を


逃すまいと、武者ぶるいしている。






チョコレートは、弾丸だ。





口にぶちこまれるやいなや


君を幸せの絶頂へと導く


愛と希望の弾丸だ。