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フルタ製菓株式会社 ボツ案 

オンエア中のTVCMについてダラダラと書くにゃ

YOUNG AND TALL








もうはるか昔、10代の頃の話だけど、

友人たちとロサンゼルスに遊びに行った時、日本好きのピアニストのおっちゃんと知り合った。

後で知ったんだけど、実はその道では有名な人で何度も日本にも公演に来ていたらしい。



おっちゃんはその時、離婚したばっかりらしくって、郊外の砂漠に大きな犬と一緒に暮らしていた。

僕らは彼の砂漠の家に泊めてもらって、おまけに車で色んなところに案内してもらった。

ハリウッドボウルやビバリーヒルズ、フィッシャーマンズワーフ、そしてチョコレートメーカーのギラデリ・スクエア。



彼はその合間に各地に住む友人のところに挨拶に行き、僕らのことを

日本から来た友人なんだよ、って紹介してくれるんだけど、

そのたびに口癖みたいに、こう言っていた。


young and tall men...

very young...and....very tall....


あまりにも昔のことで、せっかく色んなところへ連れて行ってもらった記憶も

今はほとんど残っていない。


だけど、あの時のおっちゃんの、おどけたような、

そしてずっと遠くを見ているような表情だけは憶えている。





当たり前だけど、それから僕らは帰国して、

当たり前のように進学をして、

当たり前のように社会人となった。



そして当たり前のようにめちゃくちゃに働いて

めちゃくちゃに怒られて

それなりに仕事もできるようになり

スマートな物言いで若い人に指示を出したりするようになった。



最近の若者は、まじめで、かしこそうで、物分かりもいい。

ペラペラと英語が話せたり、バリバリにプログラミングができたりする。



でも、どこかで一線を引いている。

仕事はしょせん仕事でしかないとか、メシを食うための手段でしかないとか割り切っていて、

割り切った上で、我慢するしかないと思っている。

「いま、ここにいる自分」だけが全てじゃなくて、

友人や恋人と一緒にいる時や、趣味の世界に没頭している時や

世の中の課題を解決したいと夢見ている時の自分も、

同じかそれ以上に大事だと思っている。





趣味を語るなんて、10年早いんだよ。

自分の仕事を一人前にこなせるようになってからにしやがれ。

僕はつい、そう彼らに言いそうになる。



だけど、自分がいま追っかけてる地方のアイドルについて

目をキラキラさせながら夢中になって話す若者を見ていると

そんなことは野暮すぎて言えない。



何か、僕らが経験できなかった、

うらやましいような、しかし別にうらやましくないような、

なんだかよくわからない時間を、彼らは過ごしているように見える。





何か、新しい時代がやってきていると思う。

それは僕らが昔思い描いたようなかっちょいい未来とは

かけ離れているけど、あまり悪い気はしない。




それを邪魔するのは、なんか違うような気がする。

じゃあ僕らには何ができるか?



よくわからないけど、とりあえず自分が主役になるのを

あきらめることから始めるしかないと思う。

僕ら不況の子どもたちは、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちが

主役を張るのをずっと指をくわえて見ていたから、

いざ自分の番がやってきた時に、なかなかステージから降りるのって難しい。

っていうか大抵の場合、まだ自分の順番が来てなかったりする。

だけど、そういうのをあきらめることから、始めるしかないように思う。




普通に合コンに行ったらモテるだろうに、

次に来るとかいう少女たちについて

周囲の目を気にすることもなく

熱く語り続ける若者の話を聞きながら

僕は心の中で小さくつぶやいてみる。



young and tall men......



日本からやって来た未熟な若者たちを

自分の家に泊めてくれたおっちゃんの気持ちが

ほんのちょっとだけわかるような気がする。


ちなみに、フルタ製菓のヤングでトールなお菓子といえば、

どでかばーチョコ。